道の駅「おおゆ」(湯の駅おおゆ)公式ホームページ

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大湯のえんがわという設計と運営コンセプト

建築家 隅研吾氏インタビュー

 2018年4月。鹿角市に誕生した新たなスポット「道の駅おおゆ」。この建築設計を担当したのが、世界的建築家・隈研吾氏だ。隈氏がこの道の駅建設に興味を持った理由と、建築に込められた思いについて伺った。

──多くの鹿角市民、秋田県民が思っていることなのですが、なぜ大湯の道の駅の設計に興味を持たれたのでしょうか?

「世界中の建築設計コンペティションの情報に目を通していますが、日本にかぎらず都市から離れた地方の仕事が好きで、しかも大湯は温泉郷ということでそれだけでも魅力を感じました。温泉地っていろんな宝物がありますよね、食べ物とかね。
 そんな単純な理由からこの案件に興味が生まれて、実際に現地に行きました。建物の前に広がる大きな庭のスペースの使い方がコンペのテーマのひとつにあったんですが、実際にその場に立ったときに『縁側』というイメージが浮かびました。優しい山々があり、美しい川が流れていて、自分が抱いている田園風景ってなんとなく庭や縁側があって…、それと重なったんです。縁側は、昔の建築にとって大切なものでしたが、今はあまりなくなってしまった。縁側は立ったときと座ったときの高さによって、庭の見え方が変わるでしょう。いつもの大湯の風景を縁側を通して、いつもと違う角度で観てもらいたいと思いました」。

──建物の特徴を教えてください。

「長い建物を『単調だ』って思う人がいて、建物を曲げたり凸凹にしようとしたりする。しかし私たちは、長い建物はそれぞれの場所で見え方が違い、このカタチこそ多様性に満ちている、という提案をしました。自然は多様性で溢れています。建築のほうが無理にやろうとすると、自然の多様性が死んでしまう。建物がその景色にどう溶け込むのか。建築が邪魔をして、自然を台無しにしてしまうケースはよくあるんです」。

──今回の建築には、さまざまな秋田県の素材が使われていますね。

「現地視察のときに秋田県立大学の木材高度加工研究所に立ち寄りました。そこで円筒LVLを初めて目にして、秋田の曲げわっぱのように、木を曲げるのが得意な秋田の木工文化を象徴している部材だと感じました。円筒LVLは本来とても長いもので、コンクリートを流して型材として使用するのですが、この枠を湯の駅の建築に使えるんじゃないかと思い、すぐに強度を調べてもらいました。多分、この部材を開発した人は、こんな使い方するなんて想像もしてなかったと思うけど。きっと呆れてると思うよ(笑)。でも、この部材に出会ったことで建物のイメージが生まれてきたんです。私はいつも、実際にその土地を歩いて巡るようにしていますが、俯瞰の目で観るのではなく、感情移入しながら歩きたい。そうやって歩いていると、偶然出会ったものにビビッとくることがある。きっと、神様が出会いを用意してくれているんじゃないかと思うんです。そういうものを大事にしたい」。

──訪れる人たちに、どんな楽しみ方をしてもらいたいと思っていますか?

「建築の勉強をしたい学生は別にして、すごい建築デザインを見るんだっていう気持ちは捨てて欲しい(笑)。確かにいろんなチャレンジをしている建築ですが、それよりも温泉に入ったら力が緩むみたいに、ここに来たら緩んでほしい。身を任せてくれたらいいですね。使い方は考えてもらって、どんどん建物が変わっていけばいい。木造って、あとから足したり引いたりできるのが魅力。僕らは何をされても構いませんよ。むしろ、それに僕らも一緒に参加したい。最後まで付き合いたいって思っています」。

隈研吾○くまけんご
1954年神奈川県横浜市生まれ。東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て2001年より慶應義塾大学教授。2009年より東京大学教授。1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで20か国を超す国々で建築を設計し、国内外でさまざまな賞を受賞している。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールの優しく、柔らかなデザインを提案している。2020年東京オリンピックの開会式が行われる新国立競技場の建築デザインも担当。